スイス料理は
ドイツ・フランス・イタリアという3つの食文化圏が重なり合う
という国自体の成り立ちを色濃く反映しています。チーズフォンデュだけがスイスの味ではありません。ご当地料理「ゲシュネッツェルテス」とロシュティを知ると、食の旅が何倍にも深まります。
チーズフォンデュはもともと、冬に硬くなったパンとチーズを美味しく食べるためのアルプス山岳地帯の家庭料理でした。グリュイエールやヴァシュラン、エメンタールなど数種のチーズをワインで溶かし、専用の長いフォークでパンを絡めて食べます。
フォンデュには「パンを鍋に落としたら罰ゲーム(隣の人にキスをする、飲み物を1杯おごる等)」というちょっとした食卓の伝統マナーもあり、観光客同士でも楽しめる社交的な料理です。
チューリッヒ発祥のご当地料理として最も有名なのが「ゲシュネッツェルテス」。細切りにした仔牛肉をクリームソースとマッシュルームで仕上げた濃厚な一皿で、付け合わせには短冊状のじゃがいもを焼いた「ロシュティ」が定番です。多くのレストランのメニューに載っている、まさにチューリッヒの「ご当地グルメ」です。
じゃがいもを千切りにして円盤状に焼き上げる「ロシュティ」は、ドイツ語圏スイスを象徴する料理です。実はスイスには「レシュティグラーベン(ロシュティ溝)」という言葉があり、この料理を好んで食べるドイツ語圏と、食文化・気質が異なるフランス語圏との文化的な境界線を指す表現として使われています。1つの料理名が国内の文化差を語る比喩になっている点は、スイスならではの面白さです。
スイスは世界有数のチョコレート消費国であり、生産国でもあります。1875年、ダニエル・ペーターがミルクチョコレートの製法を確立したのはスイスで、以来「リンツ&シュプルングリ」をはじめとする名だたるチョコレートブランドがこの国で生まれました。リンツ本社はチューリッヒ湖畔に近いキルヒベルクにあり、市内中心部にも直営のフラッグシップ店があります。
チューリッヒはヨーロッパ有数の物価の高さで知られ、外食費用がかさみがちです。地元の人々にも定番の「Coop(コープ)」「Migros(ミグロ)」という2大スーパーマーケットチェーンは、惣菜コーナーが充実しており、旅行者にとっても手頃に食事を済ませる強い味方になります。
チューリッヒ西地区(Zürich West)は、旧工場地帯を再開発したエリアで、比較的リーズナブルなレストラン・カフェが集まる穴場として地元でも人気が高まっています。