シアトルの食は「コーヒーと、湾の海の幸」が二本柱です。世界的なチェーンが生まれ、同時に小さなロースターがひしめくコーヒーの街。目の前の海で獲れるサケやカニ、カキが並ぶ市場。さらにアジア系移民が育てた多彩な味も加わります。雨の多い土地で温かい一杯と一皿を楽しむ——そんなシアトルの食を、賢く味わうコツとあわせて紹介します。
シアトルといえばコーヒー。1971年、パイク・プレイス・マーケットの向かいに開いた小さな豆屋が、のちに世界最大のコーヒーチェーンへと成長しました。その1号店は今も残り、茶色の旧ロゴを掲げたまま営業しています。
けれどこの街の本当の魅力は、チェーンだけではないことです。市内には自家焙煎の小さなロースターやこだわりのカフェが驚くほど多く、豆の産地や焙煎、抽出方法まで丁寧に説明してくれます。曇りと雨の多い気候、そして港町として世界中の豆が集まった歴史が、温かい一杯を日常に根づかせました。キャピトル・ヒルなどを歩きながら、地元の一軒に入ってみてください。
目の前に広がるピュージェット湾と、北の海。シアトルは豊かな漁場に囲まれた港町です。主役はなんといってもサケ。この地域では古くから先住民の暮らしを支えてきた魚で、今も焼き物やスモークで親しまれています。杉の板にのせて焼く調理法は、この土地ならではの伝統です。
もうひとつの名物がダンジネスクラブという大ぶりのカニ。身が甘く、シンプルに茹でたものが人気です。さらにピュージェット湾のカキも見逃せません。産地ごとに味わいが違い、生でいくつも食べ比べるのが楽しみ方。魚介は季節によって旬が変わるので、店の人におすすめを聞くのがいちばんです。
この街の食を一度に味わうなら、パイク・プレイス・マーケットへ。1907年開業のこの公設市場には、魚屋、青果、チーズ、パン、スープ、菓子の店がぎっしり詰まっています。魚屋が大きなサケを投げて受け渡すパフォーマンスは名物で、見物客の歓声が絶えません。
市場は斜面に沿って何層にも入り組んだ造りになっており、下の階に降りると小さな工芸品店や古書店が現れます。焼きたてのパン、その場で開けてくれるカキ、名物のクラムチャウダー——少しずつ買って食べ歩くのが正解です。混雑を避けるなら午前の早い時間がおすすめ。地元の人の買い物の場でもあります。
太平洋に開いた港町であるシアトルには、古くからアジア各地の移民が根を下ろしてきました。ダウンタウンの南東には、中国系・日系・フィリピン系・ベトナム系などのコミュニティが重なり合う地区が広がり、点心、ラーメン、フォー、東南アジアの料理が日常的に楽しめます。
面白いのが「シアトル式テリヤキ」。日本の照り焼きとは違い、甘辛いタレを絡めた炭火焼きの鶏肉に、白いご飯とサラダを添えた定食スタイルで、専門店が街じゅうにあります。移民が持ち込んだ味が現地で独自に進化した、シアトルならではのローカルフード。安くてボリュームがあり、地元の人の日常食として愛されています。
ワシントン州は州の所得税がない一方、売上税が約10.25%と高めで、表示価格に上乗せされます。レストランでは会計の18〜20%程度のチップが慣習なので、「表示価格+約3割」を目安にすると予算がぶれません。カフェのレジ端末でもチップの選択画面が出ます。
費用を抑えたいならハッピーアワーが便利。夕方の早い時間帯に、生ガキやおつまみ、飲み物を割安で出す店が多く、高級店の味を手頃に試せるチャンスです。また雨の日は、市場やフードホール、屋内のレストランに切り替えるのが賢い過ごし方。温かいスープとコーヒーが、雨の街にはよく似合います。