バルセロナの食は「スペイン料理」と「カタルーニャ料理」の2層構造で成り立っています。タパスやパエリャはスペイン全土の文化ですが、バルセロナには地中海沿岸のカタルーニャ独自の食文化があります。何を頼めば良いか、いつどこで食べるかを知っておくと、旅での食体験が大きく変わります。
スペイン料理の代名詞であるパエリャやガスパチョは、実はカタルーニャ発祥ではありません。カタルーニャ料理の特徴は地中海の魚介・オリーブオイル・ニンニク・トマトを軸にした素材の味を活かした調理にあります。
もっとも象徴的なのは「パン・コン・トマテ(Pa amb Tomàquet)」です。トーストしたパンにニンニクをこすりつけ、熟したトマトを切り口でこすって塩とオリーブオイルをかけるだけ。シンプルですが、これがバルセロナの朝食・前菜の定番です。カタルーニャでは「パンにトマトを塗る」という動作が文化的なアイデンティティのひとつとさえ言われています。
バルセロナの食体験の核心は「バル(Bar)」にあります。日本語の「バー」と同語源ですが、バルセロナのバルはコーヒー・朝食から深夜の酒まで終日対応する地元の溜まり場です。
バルでの食べ方には独自のルールがあります。カウンターに立って食べる人が多く、注文はカジュアルに、会計は最後にまとめて払うのが一般的です。重要なのは時間帯で、バルセロナの食事は日本より2〜3時間遅いのが標準です。
バルセロナは地中海に面した港湾都市です。魚介文化はこの街の食の根幹にあり、特にサフランライスに魚介をのせたフィデウア(Fideuà)はバルセロナ周辺発祥の料理です。パエリャとよく混同されますが、フィデウアは米の代わりに細いパスタ(フィデオ)を使います。
ラ・ボケリア市場(La Boqueria)はランブラス通りに面した観光客にも有名な市場ですが、実際には観光地化が進み地元客は少ない状態です。生鮮食品を目当てにするならエイシャンプラのサンタ・カテリーナ市場やグラシア地区の各区市場の方が地元の日常に近い食体験ができます。
バルセロナを代表する飲み物はカバ(Cava)です。カタルーニャで生産されるスパークリングワインで、同じ瓶内二次発酵製法ながらシャンパーニュより低価格で手に入ります。バルでグラス1杯€3〜5から飲めるため、食前に乾杯するのに最適です。
もうひとつ押さえておきたいのがベルムー(Vermut)です。ハーブで香り付けした強化ワインで、日曜の昼前後に家族や友人と飲む「ベルムータ(Vermuteo)」という習慣がバルセロナに根付いています。観光客向けのおしゃれなバルより、グラシア地区や旧市街の地元バルで頼む方が雰囲気が出ます。
バルセロナは地区によって食の雰囲気が大きく異なります。ランブラス通り周辺は観光客向けの価格・品質のレストランが多く、地元の食文化とは少し距離があります。