モントリオールの食文化は「フランスの繊細さ」と「北米の豪快さ」が同居する独特のバランスを持っています。プティーン・スモークミート・ベーグルというモントリオール三大名物を中心に、フランス料理の遺産も併せ持つこの街の食を紹介します。
フライドポテトにチーズカード(フレッシュチーズの粒)をのせ、熱々のグレービーソースをかけた料理「プティーン(Poutine)」は、1950年代にケベック州の田舎町で生まれたとされる地元発祥の料理です。当初は「ゲテモノ」扱いされていましたが、今やケベック州を代表する料理として、高級レストランからファストフードまで幅広く提供されています。
モントリオールでは伝統的なプティーンに加え、フォアグラやスモークミートをのせた「グルメプティーン」も人気で、フランス料理の技法とジャンクフード的な気軽さが融合した独自の進化を見せています。
モントリオール・スモークミートは、20世紀初頭に東欧から移住してきたユダヤ系移民がもたらした保存食文化に由来します。牛肉のブリスケット(肩バラ肉)を独自のスパイスでマリネし、燻製にしてから蒸し上げる製法で、ニューヨークのパストラミとは似て非なる独自の味わいを持っています。
老舗「シュワルツ・デリ(Schwartz's)」は1928年創業、90年以上同じレシピを守り続けているモントリオールの食の聖地として、観光客にも地元市民にも愛され続けています。
モントリオールのベーグルは蜂蜜を加えた湯で茹でてから薪窯で焼くという独特の製法を持ち、ニューヨーク・ベーグルより小ぶりで甘く、もちもちとした食感が特徴です。これも東欧系ユダヤ移民が持ち込んだ伝統で、「フェアマウント・ベーグル」と「セント・ヴィアトゥール・ベーグル」という2つの老舗が今も24時間体制で薪窯ベーグルを焼き続けています。
地元では「どちらのベーグル店が本物か」という論争が今も続いており、モントリオール市民に好みの店を聞くと熱心な意見が返ってくることが多いです。
フランス植民地時代の影響で、モントリオールには本格的なフランス料理のビストロ文化が根付いています。北米でありながらヨーロッパのような食事のリズム——前菜・メイン・デザートのコース構成、ワインを楽しみながらゆっくり食事する習慣が、他の北米都市とは一線を画す特徴です。
メープルシロップもケベック州を代表する食材で、世界のメープルシロップ生産量の約7割をケベック州が占めています。「カバン・ア・シュクル(メープル小屋)」と呼ばれる伝統的な料理体験施設も人気です。
モントリオールは地区によって食文化の色合いが異なります。旧市街・プラトー・マイル・エンドそれぞれに食の見どころがあります。